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大河と霧と英雄の船

プロローグ

「じゃあ、こんどはオリオンの足元を見てごらん。ここから大きく蛇行……えーと、うねうねって曲がりくねって、こう、西の果てまで続いてる、このながーい星の道が、エリダヌス座だ」
「え、り、だ」
「そう、エリダは母さんの名前だね。エリダヌス座は、川の星座だ」
「かわ……ぼくのなまえだね!」
「そうさ、タイガ。君の名前は母さんからもらったんだ。川でおそろいだよ」
「だけどぼく、ほんもののかわをみたことがないよ。どこにあるの? みてみたいな」
「ああ、とても悲しい報せだタイガ、われらが母なる地球ガイアにもはや川など存在しない! 父さんもアーカイブでしか見たことがないんだ。だけどね、タイガ、空にはまだ残ってるんだ。君の名前のように、大きな大きな川がね」
「かわって、みずのみちのことだよね? おそらにも、みずがあるの?」
「エリダヌス座は、水じゃなくて星でできた川なんだよ」
「おほしさまのみちなの? すごいなあ!」
「ほんものを見てみたい?」
「うん!」
「じゃあ、タイガはパイロットになればいい」
「ぱいろーと?」
「ドームの外に出るお仕事だよ」
「そと?」
「ああ、外の世界を船で飛ぶんだ。こんな小さな投影機のまやかしじゃなくて、ほんものの、果てしない星空の中をね」
「ほんもののおほしさま……」
「大昔の人たちは、船で旅をするときは、明るい星や星座を目印にしたものさ」
「めじるしに?」
「そう。だからタイガがパイロットになってドームの外に出たら、きっと星が君の道標になってくれるよ。母さんの星座も、いっしょにね」

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