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共感覚

数字

1は白、2はピンク、3は黄緑、4は緑、5は空色
数字よ、いつか私はきみたちが産まれた秘密を解いてやろう

1、
未知なる未来を目指す、真白き王者の杖
振るう者は聡明であり愚鈍でもあり、結局のところすべてである

2、
狂気の幼子は淡き色の唇で問う、滅びをもたらしてもよいかと
あどけなきその笑顔にはすでに女の兆し

3、
春の川縁の草いきれの中に、若き王子が無造作に転がっている
戯れに吹く草笛の透明な調べが、そよ風と村娘を悦ばせる

4、
眼差し険しく立つ乙女よ、あなたの気高き心のように香る
その帽子の青葉をどうか一枚、この恋心に恵んではくれまいか

5、
魔術師は空を舞う、虞なき胸にいっぱいの風を吸い込み、
若さゆえの自由! 思うがままの力! そして、それゆえ愛おしき世界!

6、
誠実なる騎士は誠実なる馬と共に旅立つ、新たなる物語のため
甲冑に包まれた胸がいま、新しい土の香を吸ってさらに膨らむ

7、
華やかなりし真昼の残り香、または暮れゆく景色の残照の中に
魔性は艶やかに佇む、夜を生き抜くための熱を狩らんと

8、
夜の窓辺から宇宙の深淵が覗き込んでいる
己の無知を嘆く賢者が、本を閉じ灯を吹き消し、叡智の瞳で覗き返す

9、
真面目に老いゆく農夫が、目立たぬようにと世間に背を向けている
どうか誰にも見つからぬうちに、この土に還れますように

0、
完結の円環はなによりも透明で、なによりも無垢なまま世界を包み込む
そのうえで人は知る、すべては有りのまま、無は有りえないものだと

10、
白いステッキを振り、黒いシルクハットを少し持ち上げて、
透き通る片眼鏡越しに怪盗殿が振り返る。
「続きはまた今度、再会の日をお楽しみに!」

※Jean Nicolas Arthur Rimbaud(アルチュール・ランボー)の詩『母音』へのオマージュです

'07 ― My Numbers ―

創作放棄

この目に映るもの できるだけ
君に伝えておきたい
なにも見えなくなるまえに

本 : 埃を被った灰色
雨 : 一面が灰色にけぶる水色
美術室のバケツ : 雨の日のきりりとひきしまった紫色
孤独 : 三月の肌によりそう緑の息吹の色
電車 : 前から見れば艶やかな黒、後ろから見れば真実の赤色
中華街の門 : よく煮込んだ金色
世界 : やさしく濃淡にうねるみどり色
音楽 : 大地からわき出る太陽の光
宇宙 : 深い深い青と蒼の空間に溶け込むかすかなクリーム色
君 : 思慮深き紺色
君のふるえる魂 : 夢見る鳥みたいなみどり色

'05 ― I'm not a creator at all. ―

惑星

五つむこうの銀河に
みどり色の星があって
私はそこに降り立った
幸福な夢だった

静寂に蒸した世界と
はじける木製の心臓と
あらゆる幸いを約束された私

死んだ体は魂を運ぶ
腐食した銀のエレベーターが双子の姉妹を運び
茜に染まった運命は
大樹の根幹へと誘われてむせ返る
そうして永遠の等しさで回る世界の
えもいわれぬほどに深いみどり

えいえん、あお
たましい、みどり
あかね色のしまいたち
一滴の水に惑わされ目覚めた夜の
深くてはかない、あお

'05 ― the Planet ―

目に見える世界

翡翠色した 夢見の鳥が
エメラルド色の寝息を立てて眠る
その羽ずれのようにささやかで静かな
世界を保持したいと思って
「崩れるな」と
力を込めた指先から
欠片がこぼれていく

茶色のくるぶしを濡らす
水色の水
ピンクの欠片が沈んでゆく
こんぺいとうの形で沈んでゆく
揺れる、水面
揺れる、水中花

水底ですべてが星になる
天の川がうまれる
粉砂糖まぶした 紺色のフェルト
その上で
緑色の藻が揺らめくような幻を 愛していた
夢は必ずジェードの形でやって来る
そんな幻も愛していた

かなしい夢も 目覚めのときはあたたかい
そんな幻も愛していた

みなそこでやさしい星になる
幻はすべてあたたかなクリーム色

'04 ― I'll tell you what are in my sight. ―


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